第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
「つまりぃ、ヒカルちゃんはアズールの浮気を疑ってんだ?」
殺気立つアズールとは対照的に、ベッドから離れて立ち上がったフロイドは楽しそうに腕を組んでにやにや笑う。
これは完全に、ヒカルたちの行く末をおもしろがっている顔だ。
「や、浮気っていうか、未来がどうなるのかなんてわからないよねって話で……。」
なにも、恋い縋るアズールを捨てて元の世界に帰ろうと言っているわけではない。
未来の選択肢のひとつとして残しておきたい、というだけのこと。
「ふ、ふふふふ……。」
突然、ヒカルの肩を掴んでいたアズールが笑った。
首をもたげ、妖しく、低く、笑った。
「え、なに、怖いんだけど。」
ヒカルの呟きを華麗に無視し、再び顔を上げたアズールの表情は、まさしくヴィラン顔。
「この期に及んで、まだ僕の想いを疑う……と。」
「だ、だから、そういうわけじゃないってば。」
「ふふふ……、ずいぶんと軽く見られたものです。こんな侮辱を受けたのは、生まれて初めてかもしれません。」
「ねえ、わたしの話を聞いてる?」
何度も言うが、あくまで可能性の話だ。
元の世界に帰る方法が見つかった時、アズールの想いがヒカルに向いていなければ、帰るという選択肢も必要ってだけで。
「だから! それが! 侮辱だっていうんですよ! まったくあなたときたら、どこまでも僕を振り回してくれますね!」
「お、落ち着こうか。」
「ええ、落ち着いています! これ以上ないほどにね! そうだ、ヒカルさんには契約の見返りに、願いを叶える報酬があるはずです。異世界への道が開いた時、僕の気持ちを疑うのなら、その時になんでも命じればいいんです!」
ヒカルがアズールの相談役を引き受け、恋を成就させた報酬として、アズールはヒカルの願いをなんでもひとつだけ聞かなければならない。
当初予定していた“フッてもらいたい”という願いは今や意味を持たず、新たな願いは保留中。
「あなたが命じるのなら、未来永劫奴隷にでもなります。永遠に愛し尽くせというのなら、従いましょう。まあ、言われなくても愛しますけどね!」
「いや、あの、だからさぁ……。」
アズールという男は、頭脳明晰で、努力家で、ちょっとバブちゃんで、そして。
とてつもなく、愛が重い男だった。