第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
ヒカルの今日の目的は、故障した掃除機の修理依頼を気難しい職人に依頼することだった。
それを口にしながら肩を落とすと、愛する人から減点を食らい、躍起になってフロイドを追い払おうとしていたアズールが瞳を輝かせて胸を張った。
「ご心配には及びませんよ! それでしたら、この僕が依頼してきましたから!」
「え? 依頼って、掃除機のこと?」
「はい。ヒカルさんを部屋に残していくのは忍びなかったですが、あなたにとって大切な約束だったのでしょう?」
「そうだけど……。大丈夫だった? 職人さん、気難しい人だって聞いたけど。」
気難しくて堅物ゆえに、クロウリーは掃除機の修理から逃げていたのだ。
けれどもヒカルの心配をよそに、アズールはドヤ顔のまま胸に手を当てながら己の実績を誇張する。
「ふふ、多少気難しいくらいでこの僕が後れを取ったりするはずがないでしょう。ええ、快く承諾してくださいましたよ!」
「あ~、だからジェイドに手土産のお菓子用意させてたんだぁ。いいな、あれ。オレも食べたかった。」
ヒカルが呑気に眠っているうちに、本日最大のミッションは達成されていたらしい。
今さらながら、なんて仕事が早く、気が回る男なのだろう。
「じゃあ、魔法の掃除機は……。」
「明後日には修理が終わる予定ですよ。腕の良い職人さんでよかったですね。それにしても、あなたも人が悪い。そんな些細なことで困っていたのなら、僕にひと言相談してくれれば……。」
「やった! ありがとう!」
ぶつぶつ落ちるアズールの呟きを無視し、掛布を跳ね飛ばしたヒカルはアズールに抱きついた。
本音を言えば、ヒカルだって好き好んで堅物な職人のもとへ行きたくはなかったのだ。
感激と感謝を体現させて抱擁をしたら、途端にアズールが硬直した。