第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
首筋にキスマークを散らしたヒカルを眺めたフロイドは、膝を立てて頬杖をつきながら、ご機嫌そうに笑った。
「よかったねぇ、不毛じゃなくて。」
「え?」
「あれ、忘れちゃった? ヒカルちゃん、言ってたじゃん。人魚と異世界人の恋なんか不毛だって。」
確かに言ったけれど、それは元を辿ればフロイドとジェイドが口にしていた発言だ。
「ヒカルちゃんとアズールは両想いだし、いつか元の世界に帰れる時が来ても、アズールを選んでくれるんでしょ?」
いつか別れが来るからこそ、不毛な恋だと言ったのはヒカル。
それに対して、帰らないのなら不毛な恋なんかじゃないと断言するのがフロイド。
言葉だけを耳にすると、単純な祝福のように聞こえるけれど、薄目を開け、にっこりと微笑むフロイドはどこか不穏だ。
「ねえ、アズールを選ぶんでしょ?」
これは、脅しだ。
一度アズールの手を取ったのなら、すべてを捨てて彼と添い遂げろという、ウツボの脅迫。
もちろん、愛する人を捨てて故郷へ帰る決断など、ヒカルにはできやしない。
できやしないが、なんだか無性に腹が立ってフロイドのメッシュを思いっきり引っ張った。
「いてッ! なにすんだよ、ハゲちゃうじゃん!」
「うるさいな! か弱い女子を脅した罰……っていうか、フロイドくんが上手く立ち回ってくれたら、こんなに拗れなかったのに!」
人のせいにしてはいけないと思うけれど、誰よりもヒカルとアズールの心情を知っていたのはフロイドだ。
もう少しこう、上手くできなかったのかと八つ当たりたくもなる。
「はあ? 内緒にしてって言ったのはヒカルちゃんでしょ。オレ、一生懸命ヒミツ守ったのに~!」
「いや、嘘だ。黙ってた方がおもしろそうとか思ったんでしょ。」
「あっは、せいかーい。ヒカルちゃんってぇ、オレのことよくわかってんじゃーん。」
わかりたくもない。
が、しかし、アズールと付き合っていくのなら、ひと癖もふた癖もあるウツボたちとも付き合っていかねばならないのだ。