第2章 撮影ホステージ!【レオナ】
ちょうどその頃、サバナクロー寮では不穏な空気が漂っていた。
先ほどの写真の一件を、ラギーがレオナに報告したからだ。
「写真を撮られただと? ラギー、お前、それがどういうことかわかってんのか?」
「……すみません。」
レオナから息苦しいほどの威圧感を与えられ、ラギーが言葉少なげに謝る。
だが、謝って済む問題じゃない。
かねてから計画していたこの策は、摘発されないことを前提とした作戦だ。
露見すれば最後、試合前に不正行為をしたとして失格もありえる。
多少勘繰られるくらいなら問題はない。
シラを切ればいいだけの話。
でも、それが写真に撮られたとあれば話は別。
「ここまで順調にやってきたってのに、計画がすべてパァだ。最悪、退学もありえるかもな。」
「……ッ、なんとかするッス! 撮られた写真とカメラを奪い取って、証拠隠滅すればいい話でしょ?」
「わかってんじゃねぇか。」
ギッと挑発的に睨むラギーの言葉を、鼻で笑いながら肯定してやる。
裏工作には、いつだってリスクが伴う。
証拠を掴まれた際の行動も、念のため視野に入れて考えていた。
「カメラを奪うのは当然として、お前はアリバイ作りもしておけ。なぁに、きちんとしたアリバイさえあれば、いくらでも誤魔化せる。最近の写真は、簡単に加工できるんだからなぁ。」
「了解ッス。んじゃ、問題のカメラを早速回収してきます。」
「ああ。……んで、誰に撮られた? ハーツラビュルの赤毛のチビか、それとも例の監督生か?」
いくら裏で暗躍しても、そろそろ誰かに嗅ぎつけられる頃合いだった。
入学式で騒動を起こした魔力なしの監督生が周囲を嗅ぎ回っていたのは把握済み。
ユウに感化されたリドルが動き出したのも。
大方そのあたりだろうと目星をつければ、ラギーの口から飛び出してきたのは意外な人物だった。
「ヒカルくんッスよ。ほら、用務員の。」
「……ヒカルだと?」
レオナの美麗な眉がぎゅっと寄る。
思い出されるのは、今朝植物園で自分の尾を踏んだ間抜けな女の顔。