第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
どうやらアズールは、ヒカルとクロウリーの話を立ち聞きしていたらしい。
別に聞かれて困るような話ではない。
だが、どうせ聞くなら最初から最後まで聞いていてほしいと思った。
「う、嘘です! この僕を騙そうとしたって、そうはいかな……ッ」
「じゃあ、クロウリーに直接聞いてみればいいでしょ! そこまで言い切るなら、裏は取っているんでしょうね?」
「そ、それは……。」
何事に対してもぬかりがないアズールは、普段ならば情報を鵜呑みにせず、しっかり裏を取る。
事の真実を少しでも確かめていれば、こんな誤解を生むはずがなく、彼がたいした調査もしていないのは明白だ。
「ほ、本当に? 本当に、町へ行くだけ? でも、帰る方法が、馬車がどうのと言っていたではないですか!」
「町から学園に帰る方法ね! クロウリーが馬車を用意してくれるって言うから、頼んだだけ。そんな曖昧な情報を信じるなんて、アズールくんらしくもない……。」
「だ、だって、しょうがないでしょう! あの時は、ただ必死で! そう、ヒカルさんが……、ヒカルさんが泣いたりするからいけないんです!」
人のせいかよ。
誤解をしたのは完全にアズールの責任だ。
「どうでもいいけど、わかったなら離して。」
「い、嫌です!」
「どうして?」
「だって、どうせ幻滅したんでしょう? ユウさんが好きだったくせにヒカルさんに心変わりして、あなたの想いに気がつかず、早とちりまでした僕のことなんか、嫌いになったでしょう!?」
アズールの声が、震えている。
とある一線を越えるとネガティブになるのは、彼の悪い癖。
「……バッカじゃない? 幻滅するなら、嫌いになれるなら、もっと早くにしてるんだから。」
幻滅できないから、嫌いになれないから、愛しさばかりが募るから、こんなにも苦しんでいるのに。
あのアズールにどんな心境の変化があって、どんな奇跡が起きたのか、ヒカルは知らない。
でも、別にいい。
彼が好きだと言ってくれるのなら、例え嘘でも騙されていたい。
それくらい、アズールを愛している。