第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
愛を囁かれ、愛を乞われ、懇願されたヒカルは、非常に困惑していた。
まず、これは夢ではないのかと疑う。
絶対に振り向いてくれないと思っていた好きな人が、いつの間にか自分を好きになっていたなんて、まさしく少女漫画の世界の話だ。
あれだけユウに好かれることばかりを考えていたアズールがいきなり心変わりしたとは俄かに信じられず、病気か、もしくは洗脳でもされてしまったのではないかとすら思う。
「お願いします、ヒカルさん。元の世界に帰らないでください。」
がちがちに締められた腕が苦しくて抜け出したくても、少し動くだけでアズールの腕にはますます力がこもる。
その仕草は、まるでなにかに怯えているようだ。
「……ッ、苦しい。ね、一回離して。」
「嫌です。そういってあなたは、元の世界へ帰ってしまうつもりなんでしょう?」
そう、それだ。
さっきから不思議に思っていたが、なぜアズールは今すぐヒカルが帰ってしまうような口ぶりをするのだろう。
確かにヒカルは「いつまでもこの世界に留まるつもりはない」と言ったが、それはあくまでも帰る方法が見つかったらの話だ。
「気が早くない? 元の世界へ帰る方法なんか、まだ全然見つかってないのに。」
「……そうやって、僕を騙そうとするんですね。見くびらないでください。知っているんですよ、あなたが今日、元の世界へ帰るということを!」
「……はあ?」
いったい、どこから仕入れた情報だ。
それとも、変な夢でも見たのだろうか。
「惚けても無駄です。さっき、学園長と話していたではありませんか!」
「なに、それ。クロウリーとの話? わたし、これから魔法の掃除機を直しに、町へ行くだけなんだけど……。」
「………え?」
ヒカルを抱きしめ、絶対に離すまいと締めつけていたアズールの腕が、初めて緩んだ。