第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
女性への接し方は、ヒカルが教えた。
心構えも、態度も、キスも、その先もすべて。
ヒカルが教えたキスを、アズールがヒカルにした。
それは一見自然なようで、自然ではない。
だって、アズールの好きな人は、キスをするべき人はヒカルではないから。
好きな人とするキスは嬉しい。
が、あまりにも突然で、しかも理由すらわからなくて、瞬きながら身体を引こうとした。
「……ッ」
胸ぐらを掴んでいた手が、今度は後頭部と背中に回った。
がっちりホールドされて逃れることは叶わず、ぬるりと濡れた舌が強引に捻じ込まれ、ヒカルの口腔を暴れ回る。
舌の動きには一切の遠慮がなくて、唇を強張らせながらキスをしていたアズールとは別人である。
戸惑う舌を捕まえて、ぐるりと絡みついてはアズールの口内へ引きずり込まれる。
柔く噛まれながら吸われ、舌の裏を擽られ、粘度を増した唾液を啜られた。
丹念で丁寧なキスは、愛情に満ちたキスだった。
上唇をやんわりと食んで、濡れた唇のまま囁かれる。
「あなたが、好きです。」
声量を落とし、色気と愛情を含んだ告白は、今度こそヒカルに違う意味を……真意を伝えた。
「元の世界になんて、帰しません。あなたが好きです。一生、傍にいてください。」
いちいち重いアズールの愛は、やはりここでも重かった。
テーブルを乗り越えてヒカルを抱きしめ、懇願される。
「陸が恋しいのなら、海を捨てても構いません。あなたが望むのならば、どんな難題も解決してあげましょう。僕の時間も、愛も、持てるすべてを捧げますから、だからどうか……帰らないでください。」
ぎゅうっと絡みついた腕の締めつけは、どこかのウツボに負けないくらい、力強くヒカルを拘束した。