第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
「そうじゃ、なくて!!」
バンッ、と叩かれたテーブルが揺れる。
アズールと契約をした初日が思い出されたが、あの日と違ってフロイドとジェイドは傍にいないし、零れてしまう危険性があるお茶も出されていない。
「……わたしが変なことを言ったから、混乱してる? ごめんね、そういうつもりじゃなかったんだけど。」
「違います。そうじゃありません!」
「心配しなくても、アズールくんとユウの邪魔をするつもりもないよ。相談に乗ってたことは秘密にするし、それに、いつまでもこの世界に留まるつもりもないから……。」
元の世界に帰る方法が見つかるかどうかはわからないけれど、見つかったのなら、ヒカルは帰るつもりでいる。
だって、愛する人が他の女性と幸せになる結末をいつまでも見守れるほど、ヒカルの心は強くないのだ。
フッてもらえれば、心の整理はつく。
でも、想いを捨てられるのとは別問題だから。
しかし、現状は元の世界に帰る方法など欠片も見つかっておらず、あくまでも可能性の話。
その可能性の話に、アズールは尋常じゃないほどに反応した。
「だから! そうじゃないと言っているだろう……ッ!」
あのアズールが、表面上はお行儀の良いアズールが、テーブルの上に足をついて乗り上がり、ヒカルの胸ぐらを掴んで引き寄せる。
抵抗もできないままヒカルの腰がソファーから浮き、引き寄せられた先には、アズールの怒った顔。
ヤクザのような所業に、「まさか殴られる!?」と危機感を覚え、咄嗟に目を瞑った。
けれど、ヒカルを襲った痛みは、頬を殴られるような衝撃ではなく、狂おしいほどに吸われた唇の痛み。