第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
いつか、ユウに想いを告げるなら……と、幾度となくシミュレーションをした。
貸し切りのモストロ・ラウンジや、神秘的な夜の海。
何パターンもあるシチュエーションを想定し、好きな人に想いを告げた。
けれども、そのシチュエーション中には、決して今のような展開が入っていない。
いつだってアズールは、スマートで格好いい自分しか想定していなかった。
現実のアズールは、スマートでも格好良くもないのに。
「……ごめん、話がだいぶ逸れちゃったね。納豆、試食するよ。」
話の流れを変えようと、ヒカルが忘れ去られていた納豆を手に取った。
最初は、ユウのために開発をしたプレゼント。
しかし今は、アズールの欲望を叶えるための毒。
一口食べれば、ヒカルは永遠にアズールのもの。
アズールだけを見て、アズールだけを頼り、アズールだけと一緒にいるヒカル。
でも、本当にそれでいいのか。
ヒカルは玉砕すると知りつつも想いを告げてくれたのに、自分はそれでいいのか。
こんなにも腐った性根を隠し、陰鬱な想いを隠し、彼女を手に入れてもいいのだろうか。
アズールが好きになったヒカルは、いつでもすべてを受け入れてくれた。
それなのに、肝心な部分を受け入れてもらわずにどうする。
(僕は……、僕は……ッ!)
粘つく納豆を箸で摘まみ、卑怯な薬が愛らしい唇に触れる…――。
「……駄目ですッ!!」
今まさにヒカルの口内へ入ろうとしていた毒を、掴んだ箸ごと叩き落とした。
驚いたヒカルが器を落とし、異臭漂う発酵食品が上質な絨毯の上でべしゃりと転がる。