第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
フロイドは、すでに飽きていた。
せっかくヒカルを捕まえて遊ぼうと思っていたのに、アズールのせいで逃げられてしまったし、ついでに怒られて気分が萎える。
「おい、僕の話を聞いているのか! ヒカルさんになにをした!?」
「なんにもしてないし。」
「嘘を言うな! あのヒカルさんが、理由もなく泣いたりするわけないだろう!」
確かに、ヒカルは強い。
思春期らしい男心も、アズールの契約も、すべてを逆手にとって自らの願いを叶えようとするヒカルは、オンボロ寮よりもオクタヴィネルにふさわしい性格をしている。
そんな彼女が涙を流したのは意外だったが、考えてみればヒカルは魔法も使えない一般人。
ヒカルの強さは、強がりという名前だったのかもしれない。
「つかさぁ、アズールのせいじゃないの?」
「……は?」
「ヒカルちゃんが泣いてた理由、オレじゃなくてアズールが原因。」
フロイドはヒカルを気に入っている。
愚かな方向に突き進む様子は、見ていても飽きない。
でも、できればヒカルには傷ついてほしくないものだ。
「僕が原因? そんなわけないだろう、でたらめを言うな。」
「あは、すごい自信。でも、アズールのせいだよ? ヒカルちゃんだって、そう言ってたしー。」
アズールの顔色が変わった。
怒りの表情が消え、焦り、そして不安の色が見え隠れする。
それは、まるで。
「ヒカルさんが……? なんて? なんて言っていたんです?」
「んーっとね、ヒミツ。」
「なんだと?」
「ヒカルちゃんとバラさないって約束したから、ヒミツ~。」
約束なんて、守っても守らなくても、どちらでもいい。
でも、そういうふうに言えばきっと、アズールがもっと焦ると思った。
フロイドの予想どおり、動揺したアズールがポーカーフェイスを崩しながら、ずれてもいない眼鏡の位置を直した。
たった一言に動揺し、慌てふためく様は、まるで。
まるで、恋する男のようだった。