第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
ここのところ、ヒカルに避けられていたのはアズールにもわかっていた。
彼女はアズールの相談役。
契約を結んだヒカルを強制的に呼び寄せることは可能だ。
しかし、ヒカルを強引な手口で服従させるのは躊躇われた。
そんなことをしたら嫌われてしまうんじゃないか、と思ったら途端に身体が動かなくなり、ご機嫌伺いのようなメールを送ってしまう。
メールの返信はあるにはあるが素っ気なく、返ってくる時間も遅い。
ヒカルには仕事があるから忙しいんだと思いつつ、なぜ自分を優先しないのだと苛立ちが募る。
あの日、二の腕につけてもらったキスマークは日に日に色が薄まって、今ではほんのり薄紅色に染まっているだけで、もはやキスマークとも呼べない。
薄まっていく痕跡がヒカルの関心を表しているようで、焦りと不安ばかりが色濃くなっていく。
様子見は終わり。
そろそろヒカルがアズールに会いにくるよう仕向けなくては……と企んでいた時、中庭で彼女の姿を見つける。
正確には、フロイドに抱きつかれ、確保されたヒカルの姿を。
最初は、「よくやった」とフロイドを称賛した。
双子の前ではヒカルに対する不満をよく口にしていたから、気を利かせたフロイドがヒカルを捕まえたのだと、そう思っていた。
けれども実際に近づいてみたら、ヒカルは喉をしゃくり上げながら泣いていた。
はらはらと涙を流し、フロイドに抱かれながら泣いていた。
その光景が妙に腹立たしくて、怒りの矛先はフロイドに向く。
彼女を離すように命じたらフロイドは素直に従ったけれど、肝心のヒカルは逃げるように去っていった。
今すぐ追いかけて慰めたい衝動に駆られたが、それよりも早く確認すべきことがある。
「……なにをしたんです、フロイド。事のしだいによっては、許さないぞ。」
「えぇ……。なんでオレがなんかした前提なの? ひっでー。」
「なにもしていないのに、ヒカルさんが泣くはずないだろう! さあ、洗いざらい話せ!」
フロイドを問い詰めた時のアズールは、まさにヒカルを守る騎士にでもなったつもりだった。
彼女を傷つけるものが許せなくて、守りたくて。
だから、涙の原因が自分にあるだなんて、微塵も考えていなかった。