第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
「どう…して……。」
誤魔化せばよかった。
違うと否定して、冗談めかして笑えばよかった。
それをしなかったのは、誤魔化す余裕もないくらい動揺していただけ。
「あは、ヒカルちゃんわかりやすーい。ダメじゃん、オレ、ただカマかけただけなのに。」
フロイドには、確信があったわけではなかった。
今さら「しまった」と思ったところでもう遅く、ヒカルは悔しそうな顔をしながら奥歯を噛む。
「そんなにケーカイしなくていいよぉ? 大丈夫、バラしたりしねぇから。」
フロイドの言葉は、あまり信用できない。
でも、ヒカルはアズールの前で彼を好きな素振りを一度もしていなかったから、例えフロイドがアズールに伝えたところで、信じてはもらえないだろう。
「ねえ、いつからアズールのこと好きだったの? 最初から? 小エビちゃんのこと、協力してってお願いされる前から?」
「……そんなの、答える義理はないでしょ。」
答える義理はない。
そもそも、説明だってできない。
まさか、この世界に来る前からアズールのことが好きで、存在もしない画面越しのキャラクターに本気の恋をしていたなんて、ドン引きもいいところ。
そう、ヒカルはアズールが好きだった。
陰険で、インテリヤクザで、情けなくて、泣き虫で、可愛いアズールが大好きだった。
ツイステの世界にやってきて、あのアズールと同じ空の下に立ち、同じ空気を吸っているだけで感動を覚える中、同時に気づく。
例えヒカルとアズールが同じ世界に生きていようとも、結ばれるわけじゃないってこと。
ヒカルだって初めは、大好きな人に近づきたくて試行錯誤したけれど、相手はあのアズール。
簡単に傍に寄らせてくれないし、心を開いてくれもしない。
そしてなにより、生身の彼は、生身の誰かに恋をする。
恋をした相手がユウであったことは自然な流れで、初めてアズールが恋する男の目をしていたのを見た時に、思った。
トリップする前よりもずっと、彼の心が遠く感じる……と。