第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
次の日から、ヒカルはユウと一緒に大食堂へ行かなくなった。
仕事が忙しいとか適当に理由をつけ、朝食は購買のパンで済ませる。
アズールとは、あれから一度も顔を合わせていない。
連絡は頻繁に来るものの、返事の回数を減らし、呼び出しはのらりくらりと躱している。
これはただの逃げだとわかっていても、少しだけ時間がほしかった。
しかし、同じ学園で暮らしている以上、三日も経てばそれも限界で、箒で中庭の落ち葉を集めているところを凶悪なウツボに襲撃された。
「あっは、ヒカルちゃんみーつけた!」
「う……ッ」
後ろから抱きつかれ、せっかく集めた落ち葉の山が崩れた。
「ちょっと、フロイドくん! 後ろから飛びついてこないで……!」
「ねーねー、なんで最近オレらんとこ来ねぇの? すっげー、つまんねぇんだけど。」
「とりあえず、離してくれる? 重たいんだけど。」
「え~、ダメ。離したら逃げんじゃん。まあ、逃がさねぇけど。」
絡まる腕がぎっと絞まり、肺のあたりが圧迫される。
この息苦しさはきっと、物理的な締めつけのせいだけではない。
「ヒカルちゃん。なーんでオレたちのこと、避けてんの?」
「別に、避けてるわけじゃ……。」
「そんなわかりやすい嘘、ジェイドじゃなくても見破れっけど。」
「……。」
黙るしか、方法がなかった。
だって、なにを言ってもフロイドにはわかるはずがない。
自分の愚かさと浅ましさに嫌悪するなんて、フロイドに理解できやしないだろう。
後悔はしていない。
ヒカルはどうしても、アズールの“初めて”が欲しかった。
いつか誰かに奪われるだけの“初めて”なら、ヒカルが奪ってやりたかった。
それが応援でも相談でもないと知っていても、止めることができなかった。
なぜなら、ヒカルはずっと――。
「ねえ、そんなにアズールが好き?」
胸の奥にずっと秘めていた想いを口に出したのは、フロイド。
誰も知るはずがない真実を言い当てられ、頭上にある彼の顔を食い入るほど見つめながら、ヒカルの手から箒が落ちた。