第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
「……わかりました。では、オンボロ寮まで送っていきます。」
せめて、オンボロ寮まで歩く時間くらいは一緒にいたくてそう申し出ても、ヒカルはそれすらも断ってきた。
「ううん、大丈夫。誰かに見られたくないし。」
「僕の隠形魔法は完璧です。誰かに見られることなんかありませんよ。」
「それでも、念のため。生徒に手を出したってバレたら、わたし、クビになっちゃう。学園を追い出されたら困るもん。アズールくんだって、困るでしょ?」
まったくもって、そのとおりだった。
スキャンダルで身を滅ぼすのはアズールも同じで、絶対に避けなければならない展開。
それがわかっていても、ヒカルに拒絶されると胸が痛む。
「……キスマーク、を。」
「え?」
「キスマークの付け方を、教えてもらっていません。」
なぜそんなことを言ったのか、自分でもわからない。
単にキスマークの付け方を知りたかっただけかもしれないし、ヒカルとの時間を得たい口実かもしれない。
ただ、ヒカルの身体に赤い痕をつける行為は、想像してみたらとても意味があることだと思った。
「……。」
黙り込んだヒカルが、一歩アズールに近づいた。
彼女が距離を詰めるたび、アズールの心臓が跳ね、息が乱れる。
そんな変化を気づかれたくなくて息を殺したら、ヒカルが羽織ったシャツの中からアズールの腕を取り、二の腕の内側へと口づけた。
筋肉がつきにくい柔らかな部分を吸われ、ちくりと痛みが走る。
甘い痛みに気を取られたのは一瞬だけで、魅惑の唇はすぐに離れていった。
「吸えばいいだけ。簡単でしょ?」
要望どおりキスマークをつけてくれたヒカルは、しかし、アズールに同じ行為を許さなかった。
ぱっと距離を取った彼女は、扉のドアノブを握り、今度こそ部屋から出ていく。
「じゃあね、おやすみなさい。」
「あ……。」
アズールの言葉を待たず、扉は無情にも閉まった。
残されたのは、赤い赤いキスマークと、それにも負けないくらいに頬を染めたアズール。
ああ、この感情はなんだろう?