第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
今日この時をもって、アズールは“初めて”ではなくなった。
その相手がヒカルであったことが、嬉しいし誇らしい。
吐精ゆえに勢いがなくなったモノを、名残惜しさを感じつつ引き抜いた。
熱い欲望を吐き出してもなお、甘い疼きは残っている。
しかし、営みによる余韻に浸っていたのはアズールだけのようで、ひと足先に吐息を整えたヒカルは、上半身を起こしてアズールの下から抜け出した。
体液で汚れた身体を拭い、下着を拾い上げて身につける様子を見て、途端に焦り出した。
「も、もう帰るんですか?」
「うん。ユウに黙って出てきちゃったから。」
ヒカルの態度は淡々としていて、先ほどまでの行為が“義務”であったのだと伝わり、アズールの繊細な心が傷ついた。
「お茶を……、お茶を淹れるので、少し待ってください!」
急いで自身も下着を穿き、シャツを羽織って身支度を整えるが、ヒカルの態度は変わらず冷たい。
「気にしないで。アズールくんも疲れたでしょう? 今日は早く休みなよ。わたしも、もう休むから。」
休みたいと言われてしまえば、無理にお茶へ誘うこともできず、他になにかヒカルを引き留める口実を探す。
「そ、そうだ。ヒカルさん、そろそろ契約の見返りを教えてくれませんか?」
「え?」
「なにか僕に叶えてもらいたい願いがあるんですよね? こちらにも準備がありますから、早めに教えてほしいのですが。」
脱いだ衣服をすっかり身につけたヒカルがようやく振り返り、アズールの瞳を見つめる。
たったそれだけのことで、不意に胸がときめいた。
一分でも長く、ヒカルと一緒に過ごしたい。
そんな些細な願いでさえ、彼女は許してくれないけれど。
「まだ、言わない。大丈夫、そう難しいことじゃないの。テスト対策ノートを作るより、ずっとずっと簡単なお願いだから。」
ならばなぜ、願いを教えてくれないのか。
ヒカルが願いを口にしない理由を、この時のアズールは知る由もなかった。