第2章 撮影ホステージ!【レオナ】
荒野に生きる猛獣たちが、走り去る草食動物を逃してくれるだろうか。
いいや、まずない。
今後の作戦を脅かす決定的証拠を掴まれたとあっては、なおさら。
「待つッス! そのカメラ、こっちに渡せ!」
「いーやーー! 無理!無理!むーりぃーー!!」
もしこのカメラが普通のカメラなら、喜んで差し出した。
けれどこれは年代物のゴーストカメラで、渡したら最後ヒカルの手元には戻ってこない。
ゴーストカメラをクロウリーから授かったのはユウだ。
失くしてしまえば、誰が責任を負うのか想像するに容易い。
だからヒカルは、とにかく逃げる。
しかし、相手はサバナクロー寮の猛者たち。
このままではあっという間に追いつかれてしまう。
(どうしよう! どうしよう! ……あ、あそこにいるのはッ)
天の助けか、廊下の突きあたりで赤毛の少年を見つけた。
「ん? こら、そこ! 校内の廊下を走るなんて規律違反だ……って、うわッ!」
自分より少し背が高い少年……ハーツラビュル寮長リドルの背中にしがみつき、勝ち誇った顔で言い放つ。
「どうだ! こっちにはリドルくんがついてるぞ! さあ、リドルくん! 彼らの首を刎ねちゃって!」
「な、なんだい急に……。いや、しかし、か弱き女性を大人数で追い回すなんて男として許せないな。お前たち、覚悟はいいね?」
どの寮でも言えることだが、寮長クラスに対抗するには同じ寮長を引き合いに出さないと勝ち目がない。
それほど、寮長に任命されている生徒は優れているのだ。
「く……ッ、リドルくんが相手となっちゃ分が悪いッスね。いいッスよ、とりあえず引き下がります。でも、ヒカルくん、覚悟しておいてほしいッス。」
じろりとヒカルを見つめた目は、狙いを定めた肉食獣の目。
もはや、面倒ルートからは逃げられそうにない。