第2章 撮影ホステージ!【レオナ】
学園内でヒカルの立ち位置は、完全にモブである。
それはヒカルが意識して原作ストーリーに介入しないようにしているからだ。
ユウのことは可愛い。
けれど、下手にヒカルが首を突っ込むと学園入学時のようにストーリーが変わる恐れがある。
ヒカルはツイステのストーリーを気に入っているし、自分が加わることによって物語の本筋が変わってしまうのは避けたいところ。
もちろん、ユウの相談には乗るけれど、あくまで聞き役に徹し、ほんのちょっとアドバイスするだけに留めたい。
そう、思っていたはずなのに……。
(あ、ラギーだ。)
校舎内をパトロール中、サバナクローの寮生を引き連れたラギーを見つけた。
ラギーがレオナ以外の寮生と多人数で一緒にいるのは珍しく、なんとはなしにカメラを向けた。
レンズにラギーを映し、シャッターを切った瞬間。
――パシャッ
“ラフ・ウィズ・ミー”
ヒカルがシャッターを切ったのと、ラギーがユニーク魔法を発動させたのは同時だった。
ユニーク魔法とは、その人物だけが持つ固有魔法であり、いわゆる必殺技的なものである。
ちなみに、校内で他人を害する魔法を使用するのは禁じられている。
おわかりだろうか。
この時点ですでに面倒くさい。
ついでに言うと、ラギーのユニーク魔法である“愚者の行進”――カタカナ読みしてラフ・ウィズ・ミーは、対象相手に自分と同じ動きを強制的にさせるというもの。
直接攻撃するわけでもなく、精神を蝕むでもなく、ただ自分と同じ動きをさせる魔法。
けれど裏を返せば、どんな危険な行為も強制的にさせられるという魔法。
おわかりだろうか。
ものすごく面倒くさい。
ラギーはレオナの片腕的ポジションにいて、ハイエナの獣人らしく狡猾でしたたか。
そんな彼が、わざわざ校則違反のリスクを冒し、意味のない魔法を使うだろうか。
ツイステ2章をクリアした方ならおわかりだろう。
これは、面倒くさいどころかヤバイやつである。
瞬時に状況を理解したヒカルはフリーズしたが、悲しいことに獣人の耳は非常に優れている。
ハッと振り向いたラギーとばっちり目が合った。
「あ、アンタ! なにしてるんスか!」
「やっば!!」
驚くラギーに気づかれて、ヒカルは踵を返して逃げ去った。