第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
閉じるように言われていた瞳を開いたら、アズールの真っ赤な顔が視界いっぱいに広がる。
浮かべた表情は羞恥と苦悶に満ちていて、彼の呼吸がどうなっているのかは、言わずと知れたこと。
「ちょ……、アズールくん! 息をして!」
「ぶは、はぁ、はぁ……ッ」
唇を離して揺さぶれば、途端に呼吸の仕方を取り戻したアズールが大きく酸素を吸い込んだ。
今のアズールにはエラもヒレもついていないのだから、呼吸は肺に頼るしかないのに。
「なにしてんの! ちゃんと呼吸をしないと……!」
「はぁ、はぁ、だって……恥ずかしいじゃ…ないですか……! 鼻息が、触れるんですよ……?」
「なに乙女みたいなこと言ってんの? 普通だから。みんなそうやって息してるの!」
でなければ、世界中の恋人たちは命懸けでキスをする羽目になってしまう。
アズールが熟読した本には、そんな基本的なことも記されていなかったのか。
「しかし、鼻息が……。」
「わたしは普通にしてたでしょ? どう? 気持ち悪いと思った?」
「き、気持ち悪いなんて、そんなこと……! むしろ、気持ちよくて……って、僕はなにをッ!」
いらぬ発言まで足してしまったアズールはさらに顔を赤くした。
揶揄ってやりたかったが、このままでは茹でタコになってしまいそうだ。
「……わかったでしょ? 息をしたって相手は不快に思わないの。」
「ん……、ゴホン。確かに、良い事例になりました。次は失敗しません。」
我に返ったアズールは、気を取り直して再びヒカルに唇を寄せる。
ちゃんと息をしているかを確認してから、もう一度舌を差し入れた。
スムーズに受け入れられた舌をアズールに絡ませると、要領を得たのか、今度は彼も積極的に応じた。
キスに正しい手法なんかない。
絡ませたり、吸ったり、叩いたり、とにかく触れ合うことに意味があって、しだいに興奮が高まってくる。
先ほどとは打って変わって、荒くなったアズールの吐息が頬に当たる。
いつしか肩を掴んでいたはずの手がヒカルの背に回り、しっかりと抱きしめていた。