第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
すでにキスという壁を越えてしまったからか、アズールの決断は意外と早かった。
うろうろと彷徨わせた手をヒカルの両肩に置いて、消え入りそうな声量で呟く。
「……お願い…します……。」
小さな声をしっかりと拾ったヒカルは、顔を上げて目を瞑る。
今度はアズールからキスをしろという意思表示に、ヒカルの肩を掴んでいた彼が戸惑ったのがわかった。
一度は自分からできたのだ。
ならばもう一度できるはず、と受け身の姿勢を変えずに待つ。
一分経った。
アズールの唇は落ちてこない。
二分経った。
まだまだアズールは動かない。
三分経った。
そろそろカップラーメンが完成する時間。
「ねえ、いつまで――」
ぱちりと目を開けたら、数センチの距離にアズールの顔があって驚いた。
しかし、なによりヒカルを驚かせたのは、アズールの奇声である。
「うわあぁぁ! なんで目を開けるんですか! 閉じててくださいッ!」
「だって……、なかなかキスしないから。」
「今! 今しようと思ってたんです! 目を、目を閉じてください!」
「わ、わかったよ……。」
これ以上動転させては先に進めないと判断したヒカルは、希望どおり目を瞑る。
宣言した手前、アズールも長らく時間を掛けるわけにはいかず、今度は比較的早く行動に出た。
唇に柔らかな感触が当たる。
肩を掴んだ手が僅かに震えていたのには、気がつかないフリをしてあげた。
先ほどと同様に舌先で唇の合間を擽ったら、今度はおずおずと開いた。
舌を伸ばしてアズールの口腔内に侵入すると、爽やかなハーブの味をほのかに感じる。
自分とは違う味に胸がときめき、さらに口づけを深めようと舌を絡ませる。
絡みつかれたアズールの舌は、どうすればいいかわからないと語るように震え、意味もなく蠢いた。
手本を見せるつもりで扱いたり、吸ったりしているうちに、ふと違和感を覚える。
先ほどからずっと、アズールの吐息を感じない。