第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
初めてのキスは好きな人と。
なんて、乙女チックな願いをアズールは抱いているのだろうか。
もしそうだとしたら、まさしくヴィランらしい考えだ。
身体は許すくせにキスだけは好きな人とだなんて、純情かつあさましい。
だからヒカルは、アズールの迷いを容易くへし折ってやった。
「キスに慣れてないと、失敗するよ? 歯がぶつかったり、狙いがずれたり、恥ずかしくない?」
「それは……、確かに……。」
「深いキスのやり方、アズールくんにわかる?」
「……わかりま、せん。」
緊張のせいか、羞恥のせいか、アズールは非常に素直。
ヒカルの色香に中てられたのだとしたら、学園唯一の女性ポジションに感謝したい。
「だからほら、練習……しよ?」
右手を頬に、左手を肩に置いたヒカルは、アズールと同じく膝立ちのまま背伸びをして唇を寄せる。
身長差ゆえに彼の唇までは届かなかったが、それでいい。
最後の距離は、アズールが狭めないと意味がない。
艶やかな唇に誘われて、思考が回らなくなったアズールがついに動いた。
ぎゅっと引き結んだ唇をぎこちなくヒカルに重ね、離れていく。
強張った唇は硬く、重ね合わせた時間も短い。
けれどもヒカルにとっては、蜂蜜よりも甘いアズールのファーストキス。
「もう一度……。」
今度は、ヒカルから口づけた。
首に腕を絡ませて、ぐっと引き寄せた唇に己のそれを重ねる。
緊張したアズールの唇はまだまだ強張っていたけれど、何度も啄むうちに、やがて力が抜けていく。
ならば次のステップに進もうと、唇の割れ目を舌先でぺろっと擽った。
「……ッ!」
大げさなほどアズールの身体が跳ね、うっかり唇が離れてしまう。
「な、なな、なにを……ッ」
「なにって、キスだってば。深いキス、練習しなくていいの?」
勤勉なアズールのことだ、ディープキスの方法は知識として持っているのだろう。
紅潮していた頬の赤みがひと際増した。