第2章 撮影ホステージ!【レオナ】
レオナは夕焼けの草原出身の第二王子。
そう、王子様である。
生まれた時から第一王子である兄と比べられ、酷評ばかりされ続けたことに少なからず不満を持っている。
本人曰く国王の座を諦めたわけではなく、謀略を練りながら虎視眈々と狙っているのだとか。
これらはすべて本人から聞いたわけではなく、ゲーム内で得た知識。
残念ながらヒカルは、レオナとあまり親しくはない。
(だってしょうがないじゃん! 緊張しちゃうんだもん!)
目が眩むほどのイケメンで、美声で、ケモ耳尻尾な最推しが目の前にいたら、発狂しないだけマシではないか?
始めてレオナと出会ったのはクロウリーに連れられた寮長会議だったが、生レオナを見たせいで記憶が断片的に飛んでいる。
自己紹介で「生きててよかった、神様ありがとう」と呟いたそうだが、やはり記憶から消えている。
この子はどんな酷い目に遭ったのだろうと心配され、同情した寮長たちが優しくなった。
結果オーライ。
しかし、まあ、人間本当に心から崇拝しているものに出会うと、言葉すら出てこないもの。
絶対に会えないと思っていただけに、レオナを目の前にすると過呼吸すら起こしてしまいそうになる。
(ああ……、やっぱり生徒にならなくてよかった!)
もしユウと一緒に生徒デビューしていたら、レオナと対峙するたびに動悸息切れを起こして物語がちっとも進まなさそうだ。
大好きな推しとはお近づきになりたいけれど、心臓に悪いので眺めるだけにしておこう。
ただ、願うならばひとつだけ。
「写真、撮らせてもらいたかったなぁ……。」
せっかくカメラを持っていたのに、美しいご尊顔をデータに残すことができなかった。
ツーショットを希望するだなんて、贅沢は言わない。
ただ、寝る前と、起きた時と、寮を出る時と、お昼ごはんを食べる時と、おやつの時と、帰宅した時に写真を眺めたいだけ。
(もう少し、もう少し静かにひっそりしていれば、レオナの寝顔が撮れたかもしれないのに!)
自分の間と運の悪さを呪うしかない。