第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
案内されたアズールの部屋は、寮長の特権でひとり部屋だ。
部屋の内装はアズールの趣味なのだろうが、どこかモストロ・ラウンジを連想させるような空間で、個人が寛ぐ部屋とは思えない。
「インテリアとか、凝ってるんだね。」
「ああ、その珊瑚のライトは実家から持ってきたものです。狭苦しい部屋を少しでも海に近づけたかったもので。」
アズールの家はレストランを経営していて、恐らくはお坊ちゃんである。
カリムやレオナほどの財力はないだろうが、怖いのであまり触らないでおこう。
「さあ、ヒカルさん。こちらへどうぞ。」
誘われた先には、ひとりで寝るには大きすぎるベッド。
アズール曰く、「このくらいの大きさじゃないと寛げないんですよ」とのこと。
ダークグレーに統一された寝具に腰を下ろそうか悩み、やめた。
ゆっくり語らうために来たのではないのだから。
ヒカルの服装はいつもの作業着姿ではなく、ゆったりめのトップスにショートパンツというラフな恰好。
単純に、脱ぎやすいと思ったから。
「ヒカルさん、お茶でも……って、うわぁ!」
語らいを希望していたのか、お茶を淹れようとしたアズールの隣で、潔くトップスを脱いだ。
インナーをつけずにいたため、トップスを脱ぐと素肌と下着がライトの光に照らされる。
「ちょ、なにを、いきなり……ッ」
「なにって、アズールくんが頼んできたんでしょ? わたし、お茶を飲むために来たんじゃないから。」
続いてショートパンツも脱いだら、雑に畳んだ衣服をサイドボードの上に置かせてもらう。
皺ひとつないベッドに単独で上がるのは躊躇われたが、アズールの覚悟が決まるまで待っていられない。
勢いをつけないと、今にも逃げ出したくなりそうだから。
一足先にベッドへ上がり、顔を赤くして狼狽えるアズールを誘う。
「ほら、来てよ。アズールくんが望んだことだよ。」
「……ッ」
眼鏡の奥で、潤んだ瞳が揺れる。
思い直してほしいのか。
思い直してほしくないのか。
ヒカルの気持ちは、たぶん、後者だ。