第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
オンボロ寮へ帰ると、先に帰宅していたユウが談話室で寛いでいた。
「あ、ヒカル、おかえり。今日は遅かったね?」
「うん、ちょっとね。頼まれ事をされちゃって……。」
「そうなんだ、用務員さんも大変だね。自分に手伝えることがあれば、なんでも言ってよ。」
ユウの優しさには、苦笑することでしか応えられなかった。
本気でユウに頼めば、アズールとの交際を考えてくれるだろうか。
「ユウの方が大変でしょ。男の子に混じって学園生活とか、気苦労が多そう。」
「ううん、思ったほどじゃないんだ。自分、もともと男っぽいし、これが全然疑われないんだよね。」
喜んでいいのか、悲しんでいいのかとボヤくユウに、ヒカルは尋ねてみた。
「好きな人とか、いないの? ほら、格好いい人いっぱいいるでしょ?」
本来であれば、もっと早くしなければならない質問だ。
それを今まで先送りにしていたのは、答えを聞くのが怖かったから。
「え、好きな人?」
お願い、言わないで。
どうか“あの人”の名前だけは、言わないで。
「そんなの――」
判決を下される罪人のような気持ちで、ユウの言葉を待つ。
「そんなの、いないに決まってるよ。授業についていくのが精一杯で、他に余裕なんかないし。それに、この学園の人たちってアクが強いからさ……。」
最後の方は冗談めかして言ったユウの答えを聞いて、肩の力がふっと抜けた。
「あれ、ヒカル……なんか顔色悪くない?」
「……ううん、大丈夫。ちょっと疲れただけ。」
「そう? この前倒れたばっかりなんだから、もっと身体を労わってね。」
前回も、そして今回も、ヒカルの体調を左右する人物はいつだってひとり。
「今日は、夜ごはんやめておこうかな。なんだかゆっくり寝たい気分なの。ユウ、グリムと二人で食堂に行ってくれる?」
「それは全然いいんだけど……。本当に大丈夫?」
「うん、全然平気。」
こんなこと、全然大丈夫。
スクリーン越しの叶わぬ恋に溺れていた日々に比べれば、なんてことはない。
だから、大丈夫。