第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
ヒカルが抱くアズールのイメージは、努力家で、インテリヤクザで、時々ヘタレ。
相談役に就任し、こうして深く関わるようになってからも、その印象はたいして変わらない。
変わりはしないが、いろいろと追加されるものはある。
例えば、セクハラ野郎だとか。
「馬鹿とはなんですか。僕はいたって真面目です!」
「……なおさら馬鹿でしょ?」
好きな子と致す前の練習台になってくれ……なんて、マンガの世界の話かと思っていた。
ヒカルにもユウにも失礼だとは思わないのか。
まあ、ユウとは付き合ってもいないけれど。
「想像してみてください。完璧だと思われていたこの僕が、いざという時に右往左往する姿を! 幻滅しませんか? がっかりでしょう?」
「完璧って思われてるかどうかが微妙……。」
「女性のあなたにはわからないかもしれませんが、男は繊細な生き物なんですよ! 本番で緊張して、勃たなかったらどうするんですか!」
「どうすると言われても……。」
それこそ、お得意の薬でどうにかすればいいと思う。
アズールならば身体の機能を整える薬くらい片手間で作れるだろうし、ユウだって多少不慣れでも気にはしないはずだ。
(ユウと付き合えたとして、わたしが練習台になったと知ったら傷つくよね。)
アズールを説得するのは、たぶん簡単だ。
付き合う前だとしても、アズールが仲の良い友達と関係を持ったと知ったら、ユウの見る目が変わってしまう……とでも言えばいい。
いくらでも、いくらでも説得できる。
でも……。
「わかった。」
「本当ですか!?」
「ただし、ここじゃ嫌。校舎内でとかありえないし、そのくらいのデリカシーは持って。」
漏れる声にも気を遣わなくてはならないし、万が一見つかりでもしたらヒカルは職を失う。
「わ、わかりました。では、夕食後にラウンジに来てください。僕の部屋で……ということなら、問題ありませんね?」
「……うん。」
「では、そのように手筈を整えておきましょう。」
無言でひとつ頷いて、ヒカルは足早に実験室から出て行った。
夕食後までに、やることは山ほど残っている。