第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
冷静沈着、インテリヤクザ代表選手権で優勝を狙えそうなアズールは、周囲のイメージを裏切って癇癪持ちである。
一部のプレイヤーからバブちゃんと呼ばれているように、彼の癇癪の起こし方は非常に子供っぽい。
タコはストレスを抱えると自分の足を食べるというから、タコの人魚もストレスを溜めやすい性質なのかもしれない。
それはさておき、実験室で癇癪を起こされては困る。
危ない薬品が割れたり混ざり合ったりして、爆発に巻き込まれでもしたら大変だ。
「あー、ごめんごめん。無神経でした。繊細な男心を弄びました、ごめんなさい。」
「うわあぁぁ! 馬鹿にしてるぅ~~ッ!!」
「馬鹿にしてないって。ほら、誰でも最初はハジメテなんだし、落ち着け落ち着け。」
「ふぅ、ふぅ……ッ」
ぽんぽん背中を叩いて宥めたら、アズールの勢いが衰えてきた。
「逆にさ、この歳で経験豊富すぎても嫌じゃない? ちょっと初々しいくらいがちょうどいいって~。」
「ほ、ほんと、ですか……?」
「本当だって! それにほら、男は女と違って初めてかどうかなんてわかんないでしょ? いつもの余裕顔しておけば大丈夫! アズールくんの余裕顔、カッコイイよ!」
もう、自分でもなにを言っているのかわからなくなってきた。
けれど、慰めに使った言葉はどれも本当のこと。
アズールの余裕顔は格好いいし、泣き顔は可愛い。
ヒカルは本気でそう思っている。
「ぐす……、その言葉、嘘だったら、承知しませんよ?」
「嘘じゃないよ。大丈夫、上手くいくって!」
「そう…ですね……。ええ、そうでしょうとも!」
ようやくいつものアズールらしさが出てきて、ほっと安堵した。
地雷には気をつけなければ。
うっかりオーバーブロットされたら堪らない。
「失敗なんてしませんよ! 予習はバッチリですからね!」
「……予習?」
「ふふ、来たる日に向けて、知識をつける努力は怠りませんよ。」
「ちなみに、どのような?」
「これです。何冊も読んだ本を、手帳に纏めました。」
制服の内ポケットから出てきた一冊の手帳。
アズールが調べに調べた、房中術を纏めた虎の巻である。