第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
ドヤ顔で薬を見せびらかすアズールに、思考を停止させたヒカルは黙り込んだ。
鮮やかなピンクと青の液体を見つめ、じわじわ復活する頭で考えた。
(性転換薬と、媚薬……。)
性転換とは、あれだ。
男女を逆転させるやつ。
媚薬はまあ、言わずと知れた薬。
では、なぜそれを今、苦労してまで作り出したのか。
「それ……、誰に使うつもり?」
この質問をするのには、かなり勇気が必要だった。
なにせ、答えは容易に想像ができるから。
「は? ユウさんに決まっているでしょう。」
さも当然だとばかりに言われ、ヒカルの頬が引き攣った。
「……前に、性別なんか関係ないって言ってたのは?」
「性別なんて、薬で変えてしまえばいいということです。察しが悪い人ですね。」
察しが悪いのではない。
察したくなかっただけだ。
「ていうか、媚薬って……。」
「か、勘違いしないでください。媚薬はその……、保険です。万が一うまくいかなかったら、困るでしょう?」
というか、付き合ってもいないのに性別を変えさせ、媚薬を使うようなナニカを妄想しているのは、ちょっと異常である。
いやいや、引いてはいけない。
彼は思春期真っ盛りの17歳なのだ。
「薬に頼るとか、発想がもう童て――」
「ちょっと! なに失礼なこと言ってるんですか、あなた!」
かっと頬を赤くしたアズールが食い気味に怒る。
「あ、ごめん。経験あるんだ?」
それはそれで意外。
なにせアズールは、外見コンプレックスを克服したばかりの人魚だ。
陸に上がってからは男子校生活だし、海でも女性とイチャコラした経験があるとは思えなかったから。
「……。」
「どうしたの?」
「……せ、………ですよ。」
「え、なに? 聞こえない。」
「……どうせ! どうせ、デブでノロマで、女性と付き合ったこともないような童貞タコ野郎ですよッ!!!」
いや、そこまで言っていない。
顔を赤くし、「うわあぁあぁ!」と叫び出したアズールは見苦しく泣いた。
どうやら、地雷だったらしい。
当然といえば、当然だ。