第2章 撮影ホステージ!【レオナ】
ナイトレイブンカレッジには、オンボロ寮を除いて七つの寮がある。
各寮ごとに特色のようなものがあり、サバナクロー寮はさしずめ肉体派といったところ。
カリスマ性と野心、そして狡猾さを持って生まれたレオナ。
他の寮長と比べて親しみやすいかどうかと言われたら、間違いなく親しみにくいタイプ。
ちなみに、ヒカルはカレッジの用務員に就任するにあたって、各寮の長には挨拶をした。
パトロールの一環で他寮に出入りすることもあるので、顔見知りになった方がいいというクロウリーの配慮。
だからヒカルとレオナは初対面ではない。
初対面ではないが、仲が良いとも言い難い。
「ご、ごご、ごめんね?」
「……チッ、気持ちよく寝ていたところを邪魔しやがって。」
「ご、ごごご、ごめんね?」
「お前、俺が話し掛けるたびにおどおどすんの、どうにかならねぇのか。気分が悪いぜ。」
「ご、ごごごご、ごめ……ッ」
「もういい。」
気分が萎えたとばかりに立ち上がったレオナは、185㎝という長身からヒカルを見下ろした。
「お前が女でよかったな。男なら、尻尾を踏んだ落とし前をきっちりとらせてやるところだった。」
「あ、レオナくん……!」
明らかに気分を害して立ち去ろうとするレオナを咄嗟に呼び止めた。
無視するかと思いきや、レオナは立ち止まってこちらを振り返る。
「なんだよ。」
「あ、いや、そのぅ……。」
「用がねぇなら呼び止めるな。」
ヒカルがもじもじしている間に、レオナは前を向いて植物園から去ってしまった。
「あ、行っちゃった……!」
行ってしまった、行ってしまった。
レオナが行ってしまった。
わたしの最推しが!!
「あーーッ、もう! かっこいい! 色気がすごい! なにあの声、美声すぎて頭がおかしくなりそう!!」
そう、サバナクロー寮長レオナ・キングスカラーこそ、ヒカルがゲームで一番に推していた心の恋人だったのだ。