第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
アズールに飲めと手渡された薬は、透明な緑色の液体。
色からしてあまり美味しそうに見えないそれは、本当に美味しくなかった。
「にがッ、うえぇ……、まずい。」
ゴーヤの絞り汁でさえ甘く感じそうな苦みに呻き、うっかり吐き出しそうになる。
「こら、吐き戻そうとしない! 誰が作った薬だと思ってるんですか、しっかり飲みなさい。」
「う、うぐぅ……。」
良薬は口に苦しと言うけれど、それにしたって苦すぎる。
用意されたコップの水を一気に呷り、なんとか薬を飲み込んだ。
すると、効果はすぐに現れて、痛みを訴えていた胃から辛さがすーっと抜けていく。
「わ、すごい、魔法みたい!」
「当たり前でしょう、魔法薬なんですから。」
素晴らしいな、魔法薬。
あとは味にも配慮してくれたら満点だ。
「……顔色もよくなりましたね。まあ、その……、よかったです。」
「あ、今、デレた?」
「でれ……? なにを言っているんです?」
つんけんキャラが急にデレると心がときめくのは、ヒカルだけだろうか。
胃痛は治ったけれど、今度は心臓を鷲掴みにされそうになる。
「今度から、なにかあった時には僕に連絡をしなさい。いいですね?」
「そうしたいのは山々だけど、連絡手段がないよ。」
「仕方ありませんね、僕所有のスマホをお貸ししましょう。いいですか? これからは必ず連絡してくださいよ?」
「う、うん。」
クロウリーですら支給してくれなかった便利アイテムを借りてしまった。
「ちなみに、対価は?」
「いりませんよ。あなたに渡しておくと、僕が便利なだけですから。」
「おお、太っ腹! わたしがユウだったらよかったのにね。」
格好良く保健室まで運んでくれて、よく効く薬を用意してくれて、スマホまで支給してくれる。
ヒカルがユウだったなら。
そうすれば、アズールの株がもっと上がったのに。
「……ええ、本当に。それでは、僕は午後の授業に出ます。くれぐれも無理はしないように。」
「はーい、ありがとう。」
すっかり体調が良くなったヒカルも、午後からは仕事に精が出せそうだ。
保健室から去るアズールの背中を見送り、ヒカルは思う。
(わたしがユウだったなら、よかったのに。)
そうすれば、ヒカルは。