第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
ユウたちと別れたあと、約束どおりヒカルの様子を見に来たアズールはオンボロ寮の戸を叩いた。
けれども、何度戸を叩いて声を掛けても中から返答はない。
窓から中の様子を窺ってみても人の気配はなく、踏みしめれば軋む床の音すらしない。
(いないようですね。やはり、体調不良というのは僕を応援するための嘘……?)
だとしたら、やはり連絡のひとつくらいは欲しいものだ。
けれども、本当に体調が優れないという可能性も拭い去れない。
ユウの話によると、ヒカルの具合は朝から悪かったらしい。
無理をせずに保健室へ行くよう言いつけたと聞くから、もしかしたらそちらに向かったのかもしれない。
保健室へ出向いたのならアズールの役目は終わったが、ユウに宣言した手前、アズールも彼女を追って保健室の方向へ歩みを進める。
体調不良なんて、日頃から己の身体を管理できない怠け者が起こすもの。
アズールの体調管理は完璧で、今まで無遅刻無欠席の皆勤賞。
優秀な成績と評価を得るためには、それくらいの努力が必要だ。
(具合の悪さが本当なら、ヒカルさんにも見習わせるべきですね。なにしろ、この僕の相談役なのですから。)
だが、この時のアズールは、ヒカルの具合の悪さが自身の実験にあるとは微塵も気づいていなかった。
実験や錬金による試作品は、弱みを握ったモブに試させるのが常で、そんな者たちの体調が崩れようとも、気にも留めなかったから。
だから、保健室へ向かう道すがら、大きな木の下で蹲るヒカルの姿を見つけ、なおかつ、その原因が自分にあると知った時、アズールの心は大いに乱れたのであった。