第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
とても今さらな疑問だが、ヒカルはアズールにとある質問をしてみた。
「そういえば、その……、ユウは男だけど、そのへんはどう考えてるの?」
ユウの性別が女性であることは、ヒカルとグリム、クロウリー以外の人たちに隠している。
男子校に生徒として通うための措置であり、ゆえにユウは男装をして性別を偽っていた。
鼻が利いて勘も鋭いレオナやラギー、ジャックあたりには察されているような気もするが、アズールも同じなのだろうか。
しかし、ヒカルの予想を裏切って、試験管とフラスコで怪しげな薬品を作っていたアズールは、事もなげに言い放った。
「性別? そんなもの、関係ありませんよ。」
「あ、へぇ……。アズールくんは、腐ってる方もいけるんだ……?」
「腐ってる? なにを言っているんですか。納豆は腐っているのではなく、発酵食品でしょう?」
「や、そっちじゃなくて……。」
それ以上は、突っ込むのをやめた。
アズールがどっちもイケるとか知りたくない事実だし、ボロを出していらぬ真実を喋ってしまいそうでもある。
それとも、人魚は性別に捉われない恋愛観なのだろうか。
海洋生物の中には、カクレクマノミのように成長してから性別が変わる生き物も多くいると聞くし。
「ヒカルさん? なにをぼーっとしているんです? 試作品ができましたよ。」
「あ、ごめん。もうできたの? 早い…ね……。」
語尾が消え入りそうになったのは、皿に盛られた“試作品”があまりにも納豆から掛け離れていたから。
「なにこれ、ダークマター?」
黒くてねちゃねちゃしたナニカは、納豆どころか食品からも掛け離れている。
こんなものを贈られたら、好かれるどころか嫌われそうだ。