第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
口にしてから、なに馬鹿なことを言ってるんだろう……と後悔した。
好きな人に納豆を贈るやつがいるか。
しかし、聞き慣れない名称に反応したアズールは、食い気味に納豆について知りたがる。
「納豆? なんですか、それは。」
「あー……、ユウの故郷にあるソウルフード的な食べ物なんだけど、こっちじゃ食べられてないみたいで。」
ユウは断然、洋食よりも和食派だ。
特に納豆が好物で、元の世界にいた頃は朝夕欠かさず食べていたらしい。
残念ながら洋食がメインであるツイステの世界では、和食というジャンルはあっても納豆までは存在せず、常々ユウが恋しがっている。
「ふぅむ? それはどのような食べ物なんです?」
「大豆を発酵させた食べ物で、出汁醤油と辛子を入れて食べたりするんだけど。」
「発酵食品ですか。見た目は?」
「茶色くて、ねばねばで……って、まさか本当に納豆をプレゼントするの?」
「当然です。ありきたりな贈り物をしてもインパクトに欠ける。この僕だからこそ手に入れられるものを贈らなければ!」
その行動力を違うところで発揮できれば、もっと良い結果になるだろうに。
とはいえ、「この前は迷惑を掛けました」とでも言って、お詫びの形で納豆を差し入れたら、ユウは純粋に喜ぶだろう。
他人から見たらセンスの欠片もない贈り物でも、本人が喜ぶのなら大成功だ。
「うん、まあ、いいんじゃないかな。」
「では早速、納豆とやらを調合しましょう! 行きますよ、ヒカルさん。」
「ちょうごう……? え、ちょっと、どこ行くの?」
調達ではなく、調合。
嫌な予感しかしない。
「どこって、実験室に決まっているでしょう。現物はヒカルさんしか知らないんですから、ちゃんと傍で協力してください。」
「でも、わたし仕事が……。」
「はあ? 僕と仕事と、どっちが大切だと思ってるんですか?」
そんな重たい彼女みたいな発言をされても困る。
ヒカルの答えを聞く前に、「さあ、行きますよ!」とアズールは実験室へ向かってしまう。
彼の中では、優先すべきは自分!という概念は不動のものらしい。