第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
少しの間悩み、浮かした腰を再びソファーに沈めたヒカルは、やがて首を縦に振って頷いた。
「わかった、いいよ。」
「本当ですか! では、こちらの契約書にサインを!」
行動が早い。
さっと出された黄金色の契約書と、高そうな万年筆。
「契約、交わすんだね?」
「当たり前です。途中で気が変わられても困りますから。さ、早くサインをしてください。」
契約書には、アズールの恋が成就するまで相談役を務めること、成就した暁にはアズールがひとつだけ願いを叶えること、と記されている。
「……ねえ、めっちゃ恋って書いてあるじゃん。」
「ッ、う、うるさいですね! 契約書には偽りが記せないんですよ!」
もはやここまでくると、アズールも己の気持ちを偽るのはやめたらしい。
契約内容を最後まで確認したヒカルは、万年筆を手に取りサインをした。
これでもう、後戻りできない。
「……はい。」
「確かに、サインをしていただきました。これで契約は成立です。おめでとうございます、晴れてあなたは僕の大事な相談役だ。」
まったくおめでたくはない。
紆余曲折はあったものの、思いどおりの結果に導けたアズールは満足そうだ。
「ふふ、これでヒカルさんも僕らの仲間……というわけですか。」
「よろしくねぇ、ヒカルちゃーん。これからいーっぱい、オレと遊ぼ?」
厄介なウツボツインズが楽しそうにヒカルの両サイドに詰め寄る。
新しいオモチャを手に入れたような顔をする彼らは、アズールの恋路などさぞかしどうでもいいのだろう。
アズールの交友関係は狭い。
身内である双子がこの調子だと、近くに相談役を求める彼の願いがちょっとだけわかる気がしてしまった。