第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
ならばなぜ、敵同然であったはずのアズールがユウに好意を寄せているのかといえば、3章の最後でユウが彼の努力を認め、肯定したからだ。
アズールが奴隷たちの解放を求めるユウに出した条件は、アトランティカ記念博物館に展示してある“とある写真”を盗み出すこと。
その写真には歴史的価値はない。
ただ、アズールにとっては黒歴史を映した憎むべき写真である。
博物館を訪れた王子様を撮り収めた写真。
その後ろにはエレメンタリースクールに通う小さな人魚たちも撮影されており、写真の隅には丸々と太ったタコの人魚が写っていた。
そう、その昔、アズールはとんでもなく太っていたのである。
結果的には黒歴史は抹消できず、その場にいた全員に過去の自分を見られてしまった。
元から知っていたジェイドとフロイドを除いた全員が驚く中、ユウだけは言ったのだ。
『まんまるで可愛いね』
『すごく頑張ったんですね』
それはまさしく過去のアズールを認める言葉であり、彼が心を打たれた様子も容易に想像ができる。
ユウの発言によって、過去の自分も大切な記録だと無理やりに納得したアズールは、ジェイドたちに諭されて自らの手で写真を返還し、奴隷たちも解放した。
まあ、奴隷にいたってはレオナが契約書を抹消してしまったためとも言えるが。
なにはともあれ、それで事件は終結した。
が、以上の経緯により、ユウがアズールに抱く印象は、インテリヤクザ……もとい、なにを対価に要求されるかわからない腹黒男である。
声を掛ければ警戒され、善意で優しくすれば裏を探られる。
まったく進展しそうにもない関係は、まさしく身から出た錆である。