第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
値段のわからない高級料理を無知な客に提供するなんて、元の世界の法律ならばアウトな案件だ。
しかしここは、日本でも地球でもない世界。
ヒカルの常識なんて通用しないし、あのアズールが法に触れるやり方を安易にするとも思えず、異議を唱えるのは早々に諦めた。
「えーっと、30万マドルだっけ? さすがに30万もお財布に入れてないし、明日か、それかオンボロ寮までついてきてもらってもいい?」
抵抗をせずに支払う姿勢を見せたヒカルに驚いたのは、アズールだった。
「……お支払いするつもりですか?」
「うん。食べちゃったものは返品できないし、しょうがないね。」
「30万マドルも持っているんですか?」
「あるよ。お給料はちゃんと貰ってるし、欲しいものもなかったからね。」
ヒカルはマドルに執着しない。
このまま永遠にツイステの世界で生きていくならまだしも、元の世界に帰ったら必要なくなるお金だ。
貯めたお金を池にドボンするならともかく、価値あるものに使ったのなら、それほど落ち込みもしない。
「で、どうしたらいい?」
「ん……、いや、冷静になりましょう。30万マドルは大金ですよ?」
「そうだね。でも、払ってほしいんでしょ?」
「もちろん、ご請求はしますが……。その、別の支払い方でも構いません。」
「別の支払い方って?」
十中八九ろくでもない方法のような気がするが、アズールはまさしくヒカルの予想を裏切らなかった。
「簡単なことです。僕は今、難解な問題を抱えていまして、是非ヒカルさんに力になってもらいたいのです。」
「……ちなみに、その難解な問題とは?」
なんとなく、アズールがなにを言い出すのかがわかった気がする。
だって、眼鏡の位置を直した彼の頬が、ほのかに赤く染まってきたから。