第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
「……はい?」
とんでもない金額を請求されたヒカルは、それが空耳だと信じて聞き返した。
「おや、聞こえませんでしたか? ヒカルさんが召し上がったスペシャルコース料理のお代ですよ。サービス料を含めまして、30万マドルです。」
「……お金、とるんだ?」
「当然でしょう! 僕はあなたをお誘いしましたが、一度も“ご馳走する”とは言っていませんよ。」
まあ、確かに。
アズールは料理を提供すると言っただけで、ご馳走するとも奢るとも言っていない。
提供された料理は文句なしに美味しかった。
美味しかったけれど……。
「それにしたって、高すぎない? ぼったくりな料金に思えるんだけど。」
「なんとまあ……。聞きましたか、ジェイド。」
「はい、アズール。ヒカルさんが物の真価をおわかりにならないとは、非常に残念です。フロイド、スペシャルコースに使われた食材のリストを。」
「はいは~い。えっとぉ、氷柱キノコに無菌室で育てられた黄金豚のヒレ肉、虹色極楽鳥の卵とぉ、常夏島産千年椰子のココナッツ。それからそれから~……。」
よくわからないが、とにかくものすごい高級な食材を使っているらしい。
どうりで口の中がパラダイスだったわけだ。
「そんな高級料理、学生に需要あるの?」
「ラッコちゃんはぁ、喜んで注文してくれるよぉ?」
「はぁ……せっかくヒカルさんのために氷柱キノコを用意しましたのに、価値をわかっていただけないとは悲しくなりますね。しくしく。」
「ジェイドくん、演技下手すぎでしょ。涙出てないし。」
三文芝居な茶番はともかくとして、ヒカルが食べたスペシャルコース料理が高級だったことは間違いないらしい。
あのアズールが善意で夕食を振る舞うはずがなかったのに、迂闊に誘いに乗ったヒカルの落ち度である。