第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
この世界にトリップする前、ヒカルは社会人だった。
毎日一生懸命働いて、お金を稼ぎ、円滑な人間関係を築いてきた。
学生と社会人とでは、得るお金が違う。
勉学に励む時間を働く時間へと変え、働いた時間はお金へと変わる。
ゆえに社会人は学生よりかは金銭的に余裕があるが、だからといってむやみやたらに散財できるほどの余裕があるとは限らない。
家賃に光熱費、食費、保険料や税金、支払わなければならないものは数えきれないほどあるのだ。
つまりなにが言いたいのかというと、ヒカルは生まれてこの方、こんなに豪華な食事をしたことがなかったという事実。
「すっご……。」
目の前に広がった未知なる料理に、ヒカルは陳腐な感想を述べた。
前菜のカルパッチョには金箔のようななにかがふわふわ踊り、メインディッシュの霜降り肉には鮮やかな色のソースが絡まって皿全体をひとつの芸術品に仕上げている。
テーブルマナーなんて知らないし、ピカピカのカラトリーにすら触れるのを躊躇っていたら、給仕していたジェイドに「お好きに召し上がって結構ですよ」と声を掛けられてしまった。
いくら紳士の社交場と銘打っていても、ここは学生が運営するカフェテリア。
お言葉に甘えて好きに食そうと決め、見栄えも味も最高なコース料理を味わった。
ここまでは、幸せなひと時だと言えよう。
しかし問題は、食後のデザートを堪能したあとに勃発する。
VIPルームに招かれ、上質な対面ソファーでアズールと向かい合って座り、そして……。
「スペシャルコース料理はいかがでしたか? 本日のお代は、30万マドルになります。」