第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
ヒカルはあくまで断る姿勢を変えない。
けれどもアズールはしつこく食い下がり、滑るような口調でヒカルをオクタヴィネルまで連れていこうとする。
「忙しい? どのような理由で忙しいのです? お力になってさしあげますよ。さあ、お話はモストロ・ラウンジにてお聞きしましょう!」
「アズールくんに助けてもらうほどじゃないから。……ていうか、さっきは部外者を誘うなんてってハーツラビュルの悪口言ってたじゃん。」
やっていることはまるで同じである。
むしろ、100%の善意であるリドルたちより質が悪い。
しかし、それを聞いたアズールは、傷ついたように眉尻を下げた。
一応付け足しておくが、アズールは断じて傷ついてはいない。
「おやおや、冷たいですね。ヒカルさんは部外者などではありません。寮への立ち入りを許可された、正真正銘の関係者でしょう?」
「ほんと、口だけは上手いよね。」
そんなやり取りをしている間にも、さりげなく腰に回した手がヒカルの方向を変えさせて、オクタヴィネル寮へと向かわされる。
「さあさあ、オクタヴィネルはこちらですよ。大丈夫、鏡を抜ければすぐそこです。」
「ちょ、ちょっと……。」
アズールの腕力は見かけによらず強い。
一見非力そうなキャラだけど、なにせ元がタコの人魚。
魔法も使えない一般女性であるヒカルより何倍も勝り、強引に連行されれば敵わない。
(まあ、いいか。なに考えてるのかはわかんないけど。)
諦めてアズールの誘いを受けようとしたヒカルは、甘かった。
この時アズールの目には、ヒカルが利用価値のある有益な人間として映っていたのだから。