第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
顔を噴火させ、多量の汗を掻きながらアズールが叫んだ。
「な、なな、なにを言っているんですか、あなたは! そ、そんなわけ、ないでしょう!」
先の先まで計算して、常に相手の裏を掻こうと企むアズールは、この場にはいなかった。
ここにいるのは、策略のひとつも練れない女の発言に動揺する思春期の人魚。
「え、うそ、隠してるつもりだったの? バレバレすぎて、隠す気ないんだと思ってたよ。」
「隠すもなにも、僕はユウさんのことなど……なんとも思っていません!」
さすがに苦しい言い分だ。
ユウのことをなにも意識していないのなら、なぜ大食堂に現れては一緒に食事をとりたがり、今もこうしてオンボロ寮に来ているのか。
それを指摘したら、「そういう気分だっただけです!」とアズールらしからぬ杜撰な言い訳を重ねていた。
「まあ、そういうことにしておいてもいいんだけどさ。仲良くなれるように頑張ってね。」
「それができれば苦労は…――」
咄嗟に言い返そうとしたアズールは、しかし、途中で言葉を切って表情を変えた。
「ああ、そうか、なるほど……その手が……。」
「……? じゃあ、またねー。」
「お待ちください!」
ぶつぶつなにかを呟き始めたアズールに別れを告げてオンボロ寮に入ろうとした時、大きな声で呼び止められた。
振り向いたら、目前にまで迫ったアズールに両肩を強く掴まれた。
「ユウさんがいないのなら、おひとりで夕食は寂しいでしょう? 我がオクタヴィネル寮にご招待しますよ。」
「え……、いや、間に合ってるから。」
「そうおっしゃらず。スペシャルコースをご提供してさしあげましょう!」
「気持ちはありがたいけど、わたし、忙しいんだよね。」
ユウと一緒に誘われたハーツラビュルの夕食会を断ったのは、忙しかったからだ。
ここでアズールの誘いを受けては意味がない。