第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
アズール・アーシェングロット。
ナイトレイブンカレッジの二年生で、オクタヴィネル寮の寮長。
腹黒な陰険手口で数多の生徒の弱みを握り、魔法を奪ったり労働を強いたりする彼は、多くの生徒に恨まれ、恐れられている。
しかし、彼の手口は巧妙かつ悪質ではあるけれど、クロウリーでさえ口出しできないほどの正攻法である。
ポムフィオーレ寮のルークに“努力の君”と呼ばれるだけあって、アズールは誰もが認める努力家だ。
ただ、その努力が常人とは違った方向へいってしまうことも多々あるのだが。
その日の夕方、ヒカルはハーツラビュル寮のパトロールを経てオンボロ寮に帰宅した。
時刻は17時。
本来であればユウと一緒に夕飯をとりに大食堂へ向かうところだが、リドルたちと良好な関係を築いているユウはハーツラビュルの食堂で夕飯を済ませるらしい。
ヒカルも一緒に……と誘われたものの、ホリデーが近いために仕事が立て込んでいて、後ろ髪を引かれる思いで辞退した。
最近は魔法の掃除機も調子が悪く、修理をお願いしたいのだが、意外と面倒くさがりなクロウリーには逃げられてばかり。
と、そんな経緯があってオンボロ寮に到着すると、何者かが寮の窓を覗き、中の様子を窺っていた。
「……なにしてるの、アズールくん。」
「……ッ、お、おや、ヒカルさん。こんなところで奇遇ですね。」
「奇遇もなにも、わたしはオンボロ寮に住んでるんだけど?」
10人中10人が不審者と判断しそうな行動を取っていたのは、今の時間はオクタヴィネルにいるはずのアズールだった。
「なにしてたの?」
「いえ、別に怪しいことをしていたわけじゃないですよ。ただ、寮に明かりが灯ってなかったものですから気になって。ええ、それだけですとも。」
なんだか言い訳っぽい理由を耳にしたヒカルは、ふむ……と考えながら彼が求めているであろう情報を口にした。
「ユウならいないよ。今日はハーツラビュルで夕飯をご馳走になるんだって。」
「な……、そ、そうですか……。」
明らかに消沈した様子のアズール。
自慢のポーカーフェイスはどこへ行ったのだろう。