第3章 気分屋フィクル!【フロイド】
大雑把に三日間の経緯を説明したら、ユウとグリムに同情の目を向けられた。
「それでいいのか?」という視線が痛いほど伝わってくるが、いいのだ、女は度胸。
しかし、凡人であるヒカルにはフロイドの行動を制御できるはずもない。
「今日からオレも、ここに住むからよろしくねぇ?」
「……は!?」
聞いてない、そんな話は聞いていない。
慌ててフロイドを引き剥がそうとしたけれど、粘着質なウツボはちっとも剥がれずご機嫌に笑っている。
「ヒカルちゃん、オレと離れたら寂しいもんね? あ、そのためにオレ、寮をキレイにしたのかぁ。オレってば、えらーい!」
「違うでしょ! 早くオクタヴィネルに帰ろうね!?」
「え、ヒカルちゃんがウチの寮に来たいの? んー、でもぉ、そうするとジェイドとアズール以外全員追い出さなきゃなぁ。まあ、ヒカルちゃんが望むんなら、そうすっけど。」
「違うってば! ジェイドくん、アズールくん、早くフロイドを迎えに来て~~!」
ヒカルの悲しい叫びはオンボロ寮に木霊して、察したユウとグリムがそっと部屋に引っ込んだ。
この裏切り者!
翌朝、フロイドは迎えに来たジェイドと一緒に無事登校していったけれど、モストロ・ラウンジ閉店後には必ずオンボロ寮に帰ってきて、狭いベッドでぎゅうぎゅうになって眠った。
しばらくはオンボロ寮に寝泊まりしていたフロイドだったが、さすがにアズールも見過ごせず、後日、オクタヴィネル寮にヒカル専用の部屋が用意された。
違う、そうじゃない。
仕事道具ごとオクタヴィネルに引きずり込まれたヒカルは、残りの学園生活を海の寮で過ごす羽目になる。
ウツボが通い婚だと言った学者、今すぐ出てきて釈明してほしい。