第3章 気分屋フィクル!【フロイド】
オンボロ寮は、無事にユウの監督下に返ってきた。
サバナクロー寮から帰還したユウとグリムを出迎えて、物語はハッピーエンド――のはずだったのだが。
「それでねぇ、アズールったら契約書をぜーんぶコバンザメちゃんたちに砂にされちゃってぇ、オーバーブロットしてやんの。すっげーカッコ悪かったぁ。」
大荷物を抱えたユウとグリムと一緒に、なぜかフロイドまで帰ってきた。
「えっと、どうしてフロイド先輩がここに……?」
ユウの困惑はもっともである。
ついさっきまで敵対していたボスの片腕が我が物顔でオンボロ寮についてきて、そしてべったりヒカルにくっついていた。
「なんでってぇ、当然じゃん? ヒカルちゃんは、オレのお嫁さんなんだし。」
「お、お嫁さん……!?」
「うん、そうだよぉ。そういえば、小エビちゃんは女の子でよかったね~。男だったらオレ、ぜってーに絞め殺してっから。」
ユウの呼び名は“小エビちゃん”に定着したらしい。
よかったよかった……って、ヒカルが気にするべきところはそこじゃない。
「あー……、ユウ。二人がいない間に、こっちにもいろいろありまして。」
「わかる、オレ様にはわかるんだゾ! オマエ、オレ様たちのために、身体を張ってコイツを足止めして……!」
「や、そういう意味ではなくてね?」
「アザラシちゃんうっざー。そういえば、アザラシちゃんって……男?」
「ひぇ……ッ」
ぎろっと睨まれたグリムが股間を押さえて震え上がった。
モンスターに雌雄があるかは知らないけれど、グリムよ、今日からキミはメスになれ。