第3章 気分屋フィクル!【フロイド】
翌日の倦怠感といったら、想像を絶するものだった。
腰が重いどころじゃなく、下半身が小鹿のように震えて力が入らないし、関節のあちらこちらがギシギシ悲鳴を上げている。
足腰が立たなくなるとは、まさにこういうことを言うのだろう。
「ヒカルちゃん、大丈夫~? アズールに薬もらってきてあげよっか。」
「けっこう、です!」
こうなった原因がなにを言う。
体調回復薬には興味があるけれど、フロイドのことだ、秘めたる部分も包み隠さず喋り、アズールを困惑させそう。
「んじゃ、今日はずーっと看病してあげる。嬉しい? ねえ、嬉しい?」
実際に動きまくってモノを吐き出したのはフロイドだというのに、ヒカルとは違ってピンピンしているところが妬ましい。
「ダメに決まってるでしょ。フロイドは授業があるんだから……って、そうだ! 今日は約束の三日目じゃん!」
「え~、なんだっけ、それ。」
「ユウと取引きしてるでしょ? アトランティカ記念博物館から写真を取ってこい、って!」
期限は契約日から三日後の日没。
つまり、今日だ。
「ああ、そんな取引きしてたっけ。でもぉ、あんな連中よりヒカルちゃんの方が大事~。お世話したげるね、なにしてほしい?」
「今すぐオクタヴィネルに戻ってほしい。」
「ヤダ。」
いや、冗談ではなくて。
今日はユウとアズールの取引最終日。
原作どおりに物語が進むなら、ユウたちは無事に写真を手に入れ、アズールからオンボロ寮を取り返す。
それだけならばスムーズにエンドを迎えるけれど、実際にはひと悶着もふた悶着もあったりする。
まあ、あれだ。
お約束のオーバーブロット。
ユウの悪党顔負けな作戦により、努力のすべてが水の泡になってしまったアズールは、闇堕ちバーサーカー化してしまうのだ。
アズールの理解者は、幼い頃から共に過ごしてきた双子。
いくらなんでも、その場にフロイドがいないのは物語として成立しないし、アズールも不憫である。