第3章 気分屋フィクル!【フロイド】
ツイステッドワンダーランドでは、他種族間での結婚は珍しくないらしい。
とはいえ、陸で生きる人間と海で生きる人魚とでは障害も多く、カップル率は多いとも言えないそうだ。
「あ、なにその目ー。もしかして、オレが浮気するって疑ってる? ひっでー、こんなに大好きって言ってんのに、信じてくんねぇんだ!」
「だってわたし、人魚がどういう生き物なのか、よく知らないし……。」
「他の人魚なんてどーでもいいじゃん! ヒカルちゃんはオレだけのもんで、オレはヒカルちゃんだけのもん。それ以外に大事なもんなんてなくね?」
正論といえば、正論である。
魔法使いでもないヒカルはフロイドの心を覗けないし、言葉を信じるしかない。
でもそれは、元の世界でヒカルたちが当たり前にしていたこと。
難しいことなんかじゃなかった。
「ふふ……、あとでジェイドに自慢しよーっと。」
先ほどまでジェイドがジェイドがと怒っていたくせに、ヒカルの想いがフロイドに向いているとわかっただけで、もうどうでもよくなったらしい。
そのあたりはやはり、気分屋のままである。
「じゃあ、そろそろ帰らなくちゃね。あ、シャワー使っていいよ? オンボロだけど、ちゃんとお湯は出るから安心してね。」
夕食を逃し、空にはすっかり月が昇っている。
帰り支度をフロイドに求めたら、上機嫌のフロイドが首を傾げた。
「は? なに言ってんの?」
「え、なにってシャワーを……。」
「今浴びても意味なくね? どうせこれから、汚れるんだし。」
「汚れる……?」
どうにも話が噛み合っていなくて、ヒカルの頭にクエスチョンマークが浮かんだ。
なんだかとんでもない誤解を生んでいそうな気がして嫌な予感がしたけれど、そういう時に限って、フロイドはヒカルの期待を裏切らなかった。