第3章 気分屋フィクル!【フロイド】
徐々に乱れてきたフロイドの吐息に余裕のなさを感じたら、彼もまた終わりが近いのだろうと悟る。
背中と腰に回された腕がいっそうきつく締まり、ヒカルを離すまいと絡みつく。
同じくヒカルも限界が近く、ピンポイントで抉られ続ける愉悦で頭がおかしくなりそうだった。
「はぁ、はぁ、そろそろ……イキそ……ッ」
ヒカルの予想は正しく、限界間際のフロイドはさらに律動を速めてぐちゃぬちゃヒカルの中を深く深く貫いた。
張り上がった切っ先が最奥の壁を叩き、視界に火花が散るほどの悦楽がヒカルを絶頂へと誘う。
「あ、あ、んゃ……ッ、フロ…イド……、もう……!」
「うん、いいよぉ。一緒にイこうね? いっぱい、いーっぱい、出してあげるから。」
ふと、頭が冷えた。
少なくともフロイドの言葉を理解できるほどには冷静になって、それから血の気が引く。
「フロイド……? ん、なに……、考えてるの……?」
「えー? ふふふ、オレはいっつもぉ、はぁ……、ヒカルちゃんのことだけ考えてるよ?」
それが本当なら、どれだけ嬉しいだろう。
でも、今はそんな冗談を聞いているのではなく、彼が先ほどから匂わせている“なにか”について言及している。
責任とか、出すとか、その言葉たちは身体を繋げた状態だと同じ意味を持つ。
「……中に、出さないでね?」
昨夜と同じ願いを口にしたのは、まさか……という恐怖があったから。
その意味を正確に理解しているはずのフロイドは、しかし、うっとりと嗤いながら頷かなかった。
「縛られるの、嫌でしょ……?」
ヒカルが唯一使える魔法の言葉。
フロイドを従わせる魔法の言葉。
ヒカル自身をも傷つける魔法は、今夜に限って発動しない。
海に潜む魔性のウツボは、頬を染め、恍惚に満ちた表情でヒカルの唇を舐め、そして……。
「オレの子供、産んでもいいよぉ?」