第3章 気分屋フィクル!【フロイド】
朦朧とするヒカルの頭に、フロイドの言葉がよく響いた。
責任という言葉は、あまりにもフロイドのイメージからかけ離れていて、空耳かと自分の耳を疑ったほど。
「ん、は……、なに……?」
「安心していいよ? だからいっぱい、いーっぱい、気持ちよくなろ?」
にへらと笑ったフロイドの口から、ギザギザの歯が覗く。
頬を染め、恍惚とするフロイドの笑みは狂気を帯びていて、ヒカルの頭が少しだけ冷静になった。
「だいじょーぶ、誰にも渡さねぇから。」
ちゅっと啄むだけの口づけをして、腰と背中に腕を回したフロイドの動きが速まった。
体重を乗せ、ヒカルが感じるポイントを狙って内壁を抉る。
「あぅ……ッ、ん、ん、やぁ……ッ」
一度引いた熱はいとも簡単に再沸騰して、ぐつぐつ頭も身体も燃え上がる。
結合部が泡立って、ぬちゃぬちゃ卑猥な音を響かせながら交わり合い、快楽の波がヒカルを襲う。
もしかしたら、これが最後なんじゃないかという不安と恐怖がヒカルを苦しめ、ならばせめてこの瞬間だけでもフロイドに愛されたいと願う。
渡さないと囁かれても、それはお気に入りのオモチャを独り占めしたい欲と大差なく、ジェイドへ好意を向けていた怒りも含まれているのだろう。
発散させたら最後、きっともうフロイドは振り向かない。
明日の日暮れにはもう、ユウがアズールとの賭けに勝利して、ヒカルとフロイドの繋がりは一切なくなる。
どうせ最後ならば、偽りの愛を信じて抱かれたい。
そう願ってフロイドを受け入れようとしたけれど、しかしそれは、フロイドの行動によって儚く消えた。