第3章 気分屋フィクル!【フロイド】
翌日、フロイドはこれまでのようにヒカルの行方を探したり、理由もなくオンボロ寮を訪ねたりはしなかった。
なんとなくヒカルの顔を見たくなくて、アズールに命じられたユウたちの邪魔を真面目にした。
けれどもやっぱり機嫌は悪く、八つ当たりの相手は必然的にユウたちへ向く。
「……チッ、ちょこまかうっぜぇな。いっそのこと、あいつら全員絞め殺しちゃおーよ。」
「いけませんよ。彼らはまだ、例の写真を手に入れていませんからね。」
そんなことはわかっている。
フロイドとジェイドが従うアズールは、なによりも写真を重要視していて、彼らがそれを手に入れない限り、八つ裂きにすることは許されない。
水中では敵わないと思った彼らは、今度はアズールの契約書自体を狙ってVIPルームに忍び込んだ。
得意の魔法をアズールに取り上げられているくせに、見苦しくも藻掻く様はフロイドを余計に苛立たせ、思考を残虐にさせる。
(……一匹くらい、絞めてもよくね?)
ユウとジャック、エースとデュースにオマケでグリム。
相手は五人もいるのだから、ひとりくらい戦闘不能にしたところで計画は滞りなく進むだろう。
昨夜から、フロイドの苛立ちは激しくなるばかり。
隣にいるジェイドの存在が、その苛立ちを増幅させていた。
生まれた時から一緒のジェイドは、いつでもフロイドの隣にいて、これから先もずっと一緒にいるはずの兄弟。
クラスが離れただけでもつまらないと感じているのに、ジェイドに対してこんな感情を抱くのは初めてだ。
ジェイドはなにもしていない。
なにもしていないのに、イライラする。
理由もなくジェイドを傷つけるわけにはいかないから、代わりに逃げ惑う小魚共を蹴散らしてやろう。