第3章 気分屋フィクル!【フロイド】
昂る欲望とは、吐精と共に鎮まっていくものだ。
少なくても、これまではそうだった。
海の中でも、陸の上でも、相手がいてもいなくても、吐き出してしまえば興奮も欲求も鎮まって、興味すらも失せてしまう。
でも、ヒカルには違う。
快楽を追い、快楽を与え、欲望のすべてを吐き出しても、彼女への興奮と興味は失せることを知らない。
むしろ、自分が吐き出したもので腹部を汚した瞬間には、ヒカルが自分の色に染まったような気がして、喜びと興奮が昂ったほど。
しかし、ヒカルは違うようだった。
乱れる息が鎮まったら、フロイドが吐き出したものを拭き取り、緩慢な仕草で起き上がりながら身支度を整える。
ついさっきまでは可愛く乱れてくれたのに、終わった途端にこちらへの関心が薄まっていく様子が気に食わなくて、無理やりに押し倒したくなる。
それを実行しなかったのは、服を身につけていくヒカルが落ち込んでいるように見えたから。
「なーんかヒカルちゃん、元気なくね?」
「……別に、そんなことないけど。」
作業着のボタンを留めるヒカルに背後から抱きつきながら尋ねてみても、返ってくる答えは素っ気ない。
どうして頼ってくれないのだろう。
ヒカルに元気がないと、フロイドの心までが曇ってくる。
なんとかして元気になってもらいたいけれど、他人の機嫌の取る方法なんて知らず、ならば自分の時はどうだったかと記憶を探る。
気分の浮き沈みが激しいのは、フロイドの専売特許。
そんなフロイドの機嫌を取ってくれるのは、いつもジェイドだ。
ならばジェイドの真似をすればいいのだ……と考えたが、肝心の方法を思い出せない。
(ジェイドのマネ、ジェイドのマネ……。あ、そーだ!)
求めていたジェイドの手法は思い出せなかったものの、別の解決法を見出したフロイドは、ヒカルの身体をぱっと離して彼女の前に回り込んだ。