第3章 気分屋フィクル!【フロイド】
ヒカルはなにも言わなかった。
ずっと一緒にいたいなんて戯言を口にしなかったし、反対に一緒にいたくないとも言えなかった。
それは単にムードを壊したくなかっただけかもしれないし、そうじゃなかったのかもしれない。
むっと唇を尖らせたフロイドは拗ねた顔をしたが、無理やりに言葉を引き出すような真似はしなかった。
それでも気分は害したらしく、耳もとで恨みがましい呟きを囁く。
「……ヒカルちゃんのバカ。」
どっちが馬鹿なんだ、という反論は喉の手前で嬌声に変わった。
気分屋なフロイド。
彼の発言をいちいち気にしていては、こちらの身がもたない。
そうとはわかっていても、叫び出したくなる衝動が胸に溢れた。
馬鹿みたい。
ずっと一緒になんていられるわけないでしょう。
馬鹿みたい。
縛られるのが嫌なあなたは、他の“楽しいこと”を見つけたら、わたしなんて見向きもしなくなるくせに。
馬鹿みたい、馬鹿みたい。
そんな事実に胸を痛める自分が、一番馬鹿みたい。
初めは気がつかないほどの痛みだった。
小さなトゲはいつまでもヒカルの心に刺さったままで、いつしか傷を広げていく。
じくじく疼く痛みに気がつきたくなくて、必死に快楽へとしがみついた。
「ん、あ……ッ、もっと……、もっとして……!」
はしたなく強請れば、拗ねていたフロイドがパッと頬を染め、嬉しそうに笑う。
「いいよぉ、もっとしたげる。オレにお願いするヒカルちゃん、すげー可愛い!」
どうでもいいお世辞を聞き流し、腰を掴んで速度を上げるフロイドの動きに合わせて、ヒカルも自ら腰を振った。
貪欲に食らいつき、欲望のままに快楽を貪って、フロイドと共に絶頂への階段を駆け足でのぼる。
「あぁ……ッ、くぅ、は、もぉ……ッ」
「ん、オレも、そろそろイクかもぉ……。」
昂ぶる愉悦の波長を合わせ、胎内が痙攣するのと楔が膨れ上がるのは同時だった。
びくんとヒカルの身体が跳ね上がった時、最奥を抉ったフロイドの雄が引き抜かれ、腹部に多量の白濁を吐き散らかした。