第3章 気分屋フィクル!【フロイド】
束縛は、フロイドが嫌うもののひとつ。
物理的にも、精神的にも、なにかに縛られることをフロイドは嫌う。
自分が巻きついて絞めるのはいいけれど、他人にそれをされると吐き気がするほど嫌になる。
恋人なんて、その最たるものだ。
頭角を現した、不確かな感情。
けれどもフロイドは、掴みかけたなにかに蓋をして、目の前で安らかな寝息を立てる獲物に食らいつく。
ボタンを外し、野暮ったい作業着を脱がせ、滑らかな白い肌の感触を堪能する。
胸を、脇腹を、腰を這い回る手つきには一切の迷いはなく、薄っぺらなショーツを下げる行為にすら、躊躇いの欠片もない。
慎ましく咲いた花芯は、まだ潤いが足りない。
一度だけ押し入った時の快感と幸福感を思い出し、性急に突き入れてやりたい欲求が生まれたが、同時にヒカルの苦しそうな声も思い出す。
フロイドの中でのヒカルは、昨日とは違う存在になっていた。
昨日までは、単なる興味の対象。
感情を剥き出しにしてくるくる変わるヒカルがおもしろかったから、飽きるまでは遊んでやろうと思っていた。
でも、今は違う。
昨日よりもヒカルへの関心はずっと強くなって、ヒカルが苦しむような真似はしたくないと思う。
困っていたら助けてあげたいし、喜ぶ顔が見たい。
構ってほしいし、構いたいし、できればずっと自分だけの相手をしていてほしい。
(気をつけないと、すぐに壊れちゃうから、オレが優しく抱いてあげるね……?)
人間との交わり方も、ヒカルが感じるキモチイイ場所も、今のフロイドは知っている。
恐らく、この学園でフロイドだけが知っていること。
無意識に浮かべた笑みは、うっとりするほど甘く、そして凶暴だ。
気持ちが昂り、興奮混じりの吐息を吐き出しながら、フロイドは潤いが足りない秘処へと唇を寄せた。
陸の上には、フロイドが知らなかったことがたくさんある。
例えば、渇いた秘処の濡らし方。
濡れていないのなら、濡らせばいい。
それらはすべて、ヒカルから教えてもらったこと。