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Change the world【ツイステ】

第3章 気分屋フィクル!【フロイド】




実はというと、フロイドは嘘をついた。

寮中に魔法をかけて掃除をするのは、なかなか骨が折れる。
これは本当。

魔法を使えば必然的にブロットが溜まり、身体が重たくなってくる。
これも本当。

でも、オーバーブロットは嘘だ。
フロイドの魔力量はそこまで少ないわけでもないし、使い慣れた浄化魔法を連発する程度で暴発はしない。

魔法学校に通う者ならそれくらいの嘘など見破れるはずだが、ヒカルは魔法の知識がない。
そのくせオーバーブロットをやたらと怖がっており、中途半端な知識があると言った方が正しい。

その緩さに付け込んで、抱擁や膝枕を強要したけれど、頑張ったのだから正当な報酬だ。

ヒカルに頭を撫でられると心地が良く、ふわふわ海中に浮かんでいるような気持ちになった。

そのまま眠ってしまいたい欲求に駆られたが、寝てしまえばヒカルの膝の感触も、指の感触も味わうことができない。
だから一生懸命眠気に耐えていたのに、先に眠ってしまったのはヒカルの方だった。


「ヒカルちゃん……?」

顔を動かしてヒカルを見上げたら、頭に置かれていたはずの手がするりと落ちた。

不安定な体勢でこくりこくり揺れるヒカルの瞳は閉じられていて、今にも倒れてしまいそう。

なんて可愛く、なんて無防備な生き物なのだろう。

「……食べられてぇの?」

むずっと顔を出した感情は、先ほどまで抱えていた“ヒカルを喜ばせたい”というものとは明らかに違っていて、欲望に素直なフロイドは湧き立つそれに逆らわず、膝から頭を上げた。

膝から重みがなくなりバランスが崩れそうになるヒカルを支え、ベッドに横たえる。

規則正しく上下する胸に手を置き、膨らみを柔く揉みながら、艶やかな唇に口づけようとして――。


『キスは、ダメ。それは、恋人とするものだから。』


不意に思い出した、ヒカルとの約束。

ぴたりと動きを止めて、考えた。

ヒカルとの約束は、守りたい。
でも、仕事の手伝いや掃除とは違って、やたらと苛立つのはなぜだろう。



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